相続登記の義務化について

1 制度の概要

現在、不動産登記は義務ではありません。とはいえ、売買などの理由で所有権が移転した場合、名義変更(登記)も一緒にすることがほとんどだと思います。

しかし、不動産の所有者が亡くなった場合には、その後売却予定などがなければ相続人への名義変更の手続きを取らずにそのまま放置されることがあり、実際、そのまま続けて住むのであれば名義変更していなくとも特に支障はありませんでした。このような状態を放置しておくと、登記簿上の所有者は実は亡くなっていて、現在は一体誰が所有する不動産なのかが分からない、という不動産が多数発生してきます。

何代にも渡って相続登記が放置された結果、相続人が枝分かれし、最終的に数千人もの相続人が出てきた、という事例もあります、

このように、不動産登記簿のみでは所有者の所在が判明しない不動産が全国で膨大な数に達しています。

こういった所有者の所在が不明な土地が多くなってしまったのは、相続に伴う名義変更をしていないことと、所有者の住所が変更されたのに住所変更登記をしていないことが主な原因であるとされています。

これ以上所有者不明の不動産を発生させないようにするため、所有者が死亡した場合に、新たに所有者となる者への名義変更を促すことが必要とされ、今回、次のような法改正がされるに至りました。

①相続登記の義務化

相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記(相続登記)を申請しなければならないとされました。

②住所、氏名等の変更登記の義務化

氏名等の変更があった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならないとされました。

③過料規定の追加

相続登記が義務化されることに伴い、正当な理由がないのに相続登記の申請を怠ったときには、10万円以下の過料に処する、とされました。

氏名等の変更登記が義務化されることに伴い、正当な理由がないのに氏名等の変更登記の申請を怠ったときは、5万円以内の過料に処する、とされました。

 

2 いつから義務化されるか

相続登記の義務化は令和6年(2024年)4月1日よりスタートします。

住所、氏名等の変更登記の義務化は令和8年(2026年)4月1日よりスタートします。

 

3 相続登記の義務化の対象になる人

令和6年4月1日以降に所有者が亡くなった場合について、相続登記が義務化されるのは当然ですが、以下の点に注意が必要です。

【注意点】 令和6年4月1日よりも前に所有者が亡くなっている場合であっても、相続登記の義務化の対象になり、令和6年4月1日から3年以内に相続登記をしなければなりません。

つまり、今の時点で所有者が亡くなっている場合も義務化の対象となり、令和6年4月1日から3年以内に相続登記をしなければなりませんので注意しましょう。

今まで放置されてきた相続登記は全て義務化の対象、ということになりますね。

 

4 今からできることをしましょう

不動産の所有者が亡くなった場合、これからはもう名義変更を放置しておくことはできなくなります。

また、相続人がさらに亡くなってしまったりすると手続きが複雑になってしまいますので、なるべく早く手続きをすることが大切だと思います。

当事務所でも、所有者が数年前、数十年前に亡くなっていたが、名義変更をしていなかったという相続登記のご依頼が増えてきています。相続登記の義務化を意識して腰を上げた、という方も多いです。

「そういえばまだ名義変更してなかったな」と心当たりのある方はまずは司法書士へご相談ください。

こんなブログ記事も書きました → ブログ記事 相続登記の義務化がいよいよ来月から始まります